腰上チューニングエンジン、その4・車両完成とコンプレッション

チューニングエンジンを車体に載せていきます

エンジンが出来上がれば、後は車体に載せていくだけです。エンジンを載せたら、その他のパーツを取り付けていきます。ここで、ちょっとしたトラブル発生です。

マフラーフランジの寸法違い
マフラーフランジの寸法違い

クラッチカバーからオイルが入れられません。
G/Kがジャマでオイルが入れられません。

取り付けられていたマフラーフランジは、オーバートルクの為か酷く変形しており、どう見ても再使用できません。そこで、新たに社外パーツを入手したのですが、取り付け穴の寸法とスタッドボルトの寸法が、若干違います。リューターで削ってフランジ穴を広げます。

もう一つ、オーナー様から「これを付けて下さい。」と送られてきた、削り出しの高価なクラッチカバーですが、オイルが入れられません。注入口が上ではなく横に付いていますが、ガスケットが邪魔をして、オイルジョッキの先を入れられないのです。

一旦クラッチカバーを外し、ガスケットの邪魔な部分をカナ切りバサミで切り落とします。再度クラッチカバーを取り付け、これでオイルが入れられます。

まあこの程度は、トラブルとは言えない程度のことですので、その都度対処していくことになります。


素晴らしいコンプレッション

キャブレターやオイルクーラー、マフラーなどを取り付けた後、エンジンオイルを入れても、すぐにエンジンは始動させません。エンジンを掛ける前にクランキングして、オイルをエンジン各部に回すのです。

私はこの作業を、非常に大事にしています。エンジンオイルを塗布しながら組んでいるとはいえ、オーバーホール直後のエンジンの中には、まだオイルは回っていません。その状態でいきなりエンジンを掛けても、各パーツに良いことなどあるはずが無いのです。

クランキングしてオイルポンプを動かし、まずはオイルをエンジン各部に十分に回します。クラッチカバーのオイル点検窓を見れば、オイルレベルが下がってくるのが分かります。エンジン各部に回ることにより、オイルが減っている証拠です。

クランキングをしてエンジンオイルを各部に回した後、いよいよエンジンの始動です。

キャブレターのパーツをアルマイト加工に出しており、まだ戻ってきませんので、とりあえず私の手持ちキャブを取り付けてエンジンを始動させます。

エンジンを始動させます。

何度やっても、ドキドキする瞬間です。でもそんな気持ちとは裏腹に、セルボタンを押すと、あっさりとエンジンは始動しました。いつもながら、ホッとします。

エンジンから異音はしないか、排気漏れはないか、などを確認したら、調子に乗って油温を上げたりせず、一旦エンジンを止めます。クランキング後と同様に、オイルレベルを再確認します。

その後、オーバーホール後の確認事項の一つでもある、コンプレッション測定をします。安いコンプレッションゲージですが、オーバーホール前と後を測定することで、効果を数字として確認することができます。

チューニング前のコンプレッションは、「7.2~10.0kpa」でした。エンジンを開ける前の数字としては、こんなものでしょうか。

チューニング前のコンプレッション
チューニング前のコンプレッション、7.2k

チューニング前のコンプレッション
チューニング前のコンプレッション、7.5k

それが、チューニング後は、以下のような素晴らしい数字が出ました。

チューニング後のコンプレッション測定
チューニング後のコンプレッション、14.0k

チューニング後のコンプレッション測定
チューニング後のコンプレッション、13.8k

今回のチューニングは、シリンダーから上の、いわゆる腰上作業のみです。ピストンをSOHC製スペシャルに変更し、ポート加工とバルブの擦り合わせ程度です。

もちろんピストンリングは新品に変更していますが、それは通常のオーバーホール作業でも行っていることです。ポートの拡大加工は、コンプレッションにはあまり影響していません。混合気をできるだけ多く、スムーズに燃焼室に入れる為の加工です。

シリンダーヘッドは、訳あって1年ほど前にアッセンブリで交換されたようですが、その為かバルブもシートも傷んでいませんでした。ですからシートカットもフェース研磨もしていません。

それでも、このような素晴らしいエンジンに変えることができました。実際に走ってみて、どのようなエンジンに生まれ変わっているのかを、早く確認してみたい気持ちになります。


SOHC製スペシャルピストン、1セットのみお譲りします。

SOHC製スペシャルピストンは、STDよりも圧倒的に軽量で、しかも高圧縮比を実現した限定生産品です。昨年今年と2回、僅かな数量だけ製作しました。

そのSOHC製スペシャルピストンですが、私の保有する圧縮比「11.5:1」のストリート用を、1セットのみ販売いたします。

ただし販売するにあたり、幾つかの条件があります。

  • 当ガレージにて組み込み作業を行なうこと。
  • 組み込みは、オーバーホールと同時に行うこと。
  • キャブレターは、ミクニTMRを使用すること。(FCR、MJNは不可)
  • キャブレターセッティングは、当ガレージにて行うこと。

全て当ガレージのこだわりですので、ご理解を頂ければと思います。チューニングメニューの追加は、ご相談に応じます。

限定1セットだけです。次回の製作は、全く決まっていません。もしかしたら、XJR1300用のSOHC製スペシャルピストンを入手できる、最後のチャンスかもしれません。

ご興味のある方は、まずはお早めにご相談下さい。