キレイすぎる車両です

3月始めにオーバーホールをご依頼頂いたお客様ですが、少しお待たせしてしまい、4月の中旬からの作業となってしまいました。GWを使い、急ピッチで組み上げて、先日無事にお引渡しとなりました。

その車両がこちらです。入庫時に撮ったものです。

非常にキレイな2004年式のXJR1300

2004年式、走行距離は約5万キロの車両ですが、それを全く感じさせないほど各部がキレイです。この車両が入庫した直後に完成車を引き取りにいらっしゃったお客様が、「これ、新車ですか?」と言っていたほどです。

極めつけは、この部分です。

汚れていないエンジンマウント部

このエンジンマウント部は、Fスプロケットの後ろ、ちょうどチェーンの下側になりますので、チェーングリスが飛び散り、そこに付着した砂や埃で酷いことになっているのが普通です。

パーツクリーナーを吹きかけ、ブラシで付着した汚れを落とさないと、工具も入りません。この部分がこんなにキレイな車両は、初めて見ました。T様、流石です!

普通、どんなに丁寧に保管していても、アルミ部分の腐食は避けられないものだと思っていましたが、それは間違った認識のようです。少なくとも外見では、どこにもそのような形跡を見つけられませんでした。

エンジンのカバー類やフロントフォークのアウターチューブも、下から浮き上がったような腐食は、全く見られません。

腐食の全く無いアウターチューブ

まるで新車のように見えるエンジン

この車両を見た後に、キャブレターやタンクの取り外された自分のXJR1200改を見た時は、とても残念な気持ちになりました。まるでゴミのように見えてしまったからです。

たまたま最近、手を掛けてやってないだけだ、これからキレイにするんだ、と自分に言い聞かせて慰めてみましたが…。私も見習わなければいけません。

昔、ヤマハの怖いおじさんに、「自分のバイクを汚くしているヤツは、ろくな整備もできん!」と言われたことを思い出しました。確かにそのとおりです。汚れていては、整備不良やクラックすら、見つけ出す事も出来ません。そのおじさんの怒った顔が、なぜか頭に浮かんできました。

もちろん、エンジンを降ろしたりカバー類を外した時にしか見えない部分はあります。そのような箇所は、通常では手も入りません。ですから、実際に走行している車両であれば、汚れていて当たり前です。

この非常に良く手入れされたキレイな車両の、そんな汚れたところを見つけて、ちょっとだけ嬉しくなりました。


エンジンの中は・・・?

5万キロ走行の,ピストン

ピストンは、走行距離なりにカーボンの蓄積はあります。これは防ぎようがありません。しかし積もったカーボンは落とせます。ただ、スカート部に強い当たりがありましたので、オーナー様の了解を得た上でピストンは交換です。

EXポート

EXバルブ

排気ポートやEXバルブは、良い色に焼けています。低速域での走行が多い方は、どこも黒いカーボンが蓄積するものですが、ある程度回して走る方のエンジンは、このようにEX側はキツネ色に焼けています。

XJR1300は1,250ccの排気量と大きなトルクがありますので、7~8,000回転も回さなくても、十分に速く走れるオートバイです。でも、回した時の加速感やスピードの伸びが楽しい、という方もいます。そのような走り方をする方は、真っ黒なカーボンが蓄積するだけでなく、このような焼け色になります。

ただ、当然各部にはその分、負荷が掛かります。特にピストンやバルブ回りは消耗します。どうしても圧縮が下がる傾向になります。

カーボンを落としたEXバルブのフェース面

エアクリーナーボックスの付いたノーマルキャブレター仕様ですが、EXバルブはこのような状態でした。ここまでくると、擦り合わせ程度ではどうにもなりません。コンプレッションゲージで計測した際、あまり良くない数字が出たのも頷けます。

ただ、エンジンの消耗を考えるあまり、ガマンした乗り方をするのはどうなのかな…、と個人的には思います。痛んだエンジンはオーバーホールすれば良い、傷んだパーツは交換すれば良いのです。

収集マニアではないのですから、オートバイは楽しく走ってナンボです。ただし、転倒や事故には十分に気をつけてください。痛いですし、お金も掛かりますから。最悪の場合は・・・、いやいや、想像するのは止めましょう。