TMRの初期セッティング

Wossnerピストン組込みエンジンにTMRを装着

Wossnerピストンを組み込んだお客様のマシンに、やっとキャブレターを取り付けることができました。

今まで使用していたキャブレターは、ヨシムラミクニのTMR-MJNですが、新規に取り付けたキャブレターは、ミクニTMRの40パイです。燃費は多少悪くなりますが、加速感やパワー感はこちらの方が1枚上です。

レーシングキャブレターを楽しむ場合は、セッティング作業が必ず必要になります。そもそもレーシングパーツですので、セッティングやメンテナンス作業は、ユーザーが自己の責任において行うものです。

XJR1300用だからといって、いわゆるポン付けで楽しく走れる保証など、どこにもありません。XJR1300に取り付けられますよ、というだけです。ちゃんと走らない、息つきを起こす、ボコつく、などといった症状は、キャブレターの問題ではなく、ほとんどがセッティングの問題です。

レーシングキャブレターを楽しもうと考えたなら、セッティング作業も楽しもう、くらいの気持ちも必要です。

さて、いよいよセッティング作業ですが、実はその前に、一つやるべきことがあります。

新品TMRキャブレターの分解

新品TMRキャブレターの調整作業

装着前に、一度キャブレターを分解します。新品なのになぜ?と思われる方もいるかもしれませんが、初期設定や各部の確認、微調整をしたいからです。

セッティング作業をする前にキャブレターの状態を確認するのは、二度手間三度手間を防ぐ意味もありますが、正常な働きをしない状態でいくらセッティング作業をしても、無駄になるからです。

設定確認と微調整をしたら、いよいよマシンに装着します。Wossnerピストンを組み込んだエンジンが出来上がった後、キャブレターのトラブルで少し手間取りましたが、やっとこれで走行ができます。

TMRキャブレターの装着テスト


TMRの初期セッティング

装着前の分解確認作業では、同調など調整が必要なところはありましたが、初期設定はTMR40のベースセッティング通りでした。主なベースセッティングは以下になります。

MJ
160
JN
E-52 #3
PJ
27.5
PS
2

セッティングは、エンジンの仕様やマフラー等で変わりますが、XJR1300にTMRの組み合わせであれば、概ね予想はつきます。まずは確認も含めて、このままの状態で走ってみます。

エンジンの始動やアイドリングも含め、低速域は特に問題ありません。アイドリングを調整した後、アクセルを捻らないでクラッチミートだけで発進してみます。

息ついたりバラついたりせず、トルクだけで発進できれば、まずは合格です。カムシャフトがSTDであれば、アクセルを捻らなくても発進できるはずです。

レーシングキャブレターを公道で使用する際、一番気を使うのが中間域です。アクセル開度で言えば、1/8~1/2あたりの、JNが受け持つ領域です。なぜなら、走行時間のほとんどがこの領域だからです。

一定速度で巡行したり、また加速したりは、ほぼJNが受け持っています。よくMJを気にする方がいますが、極端な言い方をすれば、MJはたいして重要ではありません。

MJは、あくまでも全開域のガソリン量を決めるものです。1300ccの排気量があって130psを越えるオートバイに乗り、どれだけ全開にできるのでしょう。そもそも、一般道ではそんなテストすら出来ません。危険なだけでなく、見つかれば現行犯逮捕ものです。

もしテストするのであれば、高速道路かシャーシダイナモで行うことをお勧めします。


JNの煮詰め作業

今回のセッティング作業は、エンジンのオーバーホール&チューニングをご依頼下さったお客様が、新規でTMRを装着することになりましたので、ある程度の領域で問題なく楽しく走れるようにするための作業です。

とは言え、エンジンは組み上がったばかりで、まだ慣らしも終わっていない状況です。当然、MJを確認するための全開テストは出来ません。エンジンの回転数も、急開テスト時に一瞬だけ5,000rpmまで回しましたが、その他は4,000rpm以下でのテストです。

せっかくエンジンを良くしても、キャブレターのセッティングがズレていれば、楽しく走ることもできません。MJをイジらなくても、パイロット系とJNを調整すれば、まずはどのような領域でも問題なく走れるはずです。

パイロット系は、発進テストもアイドリングも問題ありませんでしたので、中間域のテストです。一定巡行、1/8、1/4、急開を念入りに確認します。案の定、ベースセッティングでは今二つくらいの状態です。明らかに濃い状態です。

以前、自分のマシンにTMR41パイを使用していた際は、JNを細くして低中速で開けた時のトルク感を楽しむようなセッティングにしていましたが、多少操りづらいところもあり、一般向きではありません。

今回はまず、クリップ位置を上げてみました。う~~ん、しっくりきません。

次に、JNを1ランク太くしてみました。フィーリングは、だいぶ良くなりました。さらに、クリップ位置を上下2段ずつテストしてみました。その中でも一番フィーリングが良かったセットで、一定巡行、1/8、1/4、急開をもう一度テストしました。

もっと突き詰めていくのであれば、JNを2ランク太くしてテストしてみたかったのですが、今回はパーツがありません。

最後に、発進時のフィーリングを少し変えてみたかったので、PSを半回転閉めこんでみました。しかし、トルク感が減少した感じになりましたので、元に戻しました。

そこまでセッティング変更した後、一旦キャブレターを取り外し、私の愛車に取り付けました。


空燃比のチェック

XJR1300に取り付けた空燃比センサー

現在、私のマシンには空燃比計のセンサーが取り付けられています。

アダプターを制作し、マフラーエンドとサイレンサーの間に挟みこんで、空燃比センサーを装着しています。このようにした理由は、簡単に取り外しが出来るからです。

電源も車載バッテリーから引くのではなく、専用バッテリーから繋いでいます。その専用バッテリーは、ロガーなどと一緒にタンクバッグに収納します。こうすれば、配線の必要もなく、簡単に他車にも取り付け可能です。

ただ現在は、まだ多くのマフラーに使用されている60.5mm径のアダプターがありません。私のマシンに合う、少し細めのアダプターのみの制作です。今回のお客様のマフラーも、案の定、60.5mmです。ですから手持ちのアダプターは使用できません。

そこで、エンジンの仕様は異なりますが、大まかな空燃比チェックのため、キャブレターを私のマシンに装着し、空燃比を測定してみました。

結果は・・・良好でした。欲を言えば一定速度での巡行時、いわゆるパーシャル状態の時ですが、燃費を稼ぐ為にもう少し薄くても良いかな、といった程度です。

引渡し時にお客様に確認して頂きましたが、どの領域でも何の不満もなく走れる、と言って頂きました。後は慣らし終了時に、多少の微調整と全開域のチェックをすれば、さらに良くなると思います。その時までに、60.5mmのアダプターを制作しておきますね。

60.5mmのアダプターができれば、ほとんどの集合マフラーに対応できます。TMRキャブレターのセッティングでお悩みの方は、ご相談に応じることもできるかもしれません。

まずはお気軽にご相談ください。