XJR1200改オーバーホール計画 その1・エンジン編

XJR1200改のサイドカバー

現在私が乗っているXJR1300ですが、正式に言えばXJR1200です。見た目は1300かもしれませんが、フレームだけが1200なんです。ですからサイドカバーには、『XJR1200』とペイントしています。

別に1200に特別なこだわりがある訳ではありません。ただフレームが1200なので、そう書いてみただけのことです。

そんな私の愛車も、エンジンを組んでから10年ほど経ちます。このエンジン、パワーはある程度出ていますが、問題が無いわけではありません。なので数年前からオーバーホールしたいな、と考えていました。


問題その1・圧縮漏れ

XJR1200改のカッパーガスケット

XJRでレースをしていた当時、ヘッドガスケットにはカッパーガスケットを使用していました。いわゆる、銅のガスケットです。圧縮漏れ対策のためです。

これを使用するには、シリンダー上面にスリーブ内径より一回り大きな溝を掘り、その溝に銅線をはめ込んでカッパーに食い込ませる必要がありました。しかしこの溝の幅や深さ、使用する銅線の太さの組み合わせが非常に微妙でした。

溝加工したシリンダー上面

その上、厚みが異なるカッパーが送られてくることもあり、いろいろと難儀しました。カッパーの厚みが変われば、当然ですが圧縮比も変わり、その他の問題も起きます。

そんなレース活動でかろうじて生き残った部品で組み上げたのが、今のエンジンです。中には酷使されてきた部品もあります。もちろん、新品パーツも使っていますが、大半はまだ使えそうな部品の中から一番状態の良さそうなものを選んだに過ぎません。

ですから、言葉を換えれば「廃品パーツで作ったエンジン」と言えるのかもしれません。

まあ公道では、レースと比較してはるかに負荷や負担は少なくなりますので、当時は「とりあえず走れればいいや」といった軽い気持ちでいたのは、間違いないです。

そんなエンジンですから、多少の圧縮漏れを起こすこともあり、その都度、ヘッドを増し締めしていました。圧縮漏れを起こせばオイルがにじみ、エンジンも汚れます。エンジンが汚れれば、気分が良い訳がありません。


問題その2・シリンダーヘッド

シリンダーヘッドは、レース活動の最後の頃に使っていたものを、ほぼそのまま使用しています。ポートは拡大し、燃焼室も含めてピカピカに磨かれています。バルブもピカピカです。でも、どれも相当にくたびれています。

チタンリテーナが傷んでいましたので、インナーシムからSTDのアウターシムに変更はしていますが、バルブもヘッドも、お疲れ様状態です。バルブを交換したところで、バルブシートは既にシートカットもしている上、長年の使用から面の歪みも出ているでしょう。

現在のメタルのSTDガスケットを使用したいのですが、カッパーに合わせて極限まで面研磨していますので、それも出来ません。STDガスケットを使用するには、新たにヘッドを作り直すしか方法はありません。


問題その3・ピストン

XJR1300用ワイセコピストン

ピストンは、ワイセコの79mmを使用しています。これもレースで使用していたパーツです。デトネーションの形跡もなく、まだ公道であれば使用できると判断しましたが、これもお疲れ様状態であるのは、間違いありません。

圧縮比は、STDの9.7:1に対し、このピストンだけでは10.2:1程度にしかなりません。そこでヘッドとシリンダーを面研磨して11.8:1程度まで上げています。

この圧縮比でのトルク感や加速感を味わうと、もうSTDでは満足できません。ですので、新たに作るエンジンでも、12.0:1程度の圧縮比が欲しいところです。

このピストンを使用し、圧縮比を12.0:1まで上げるには、新たに作るヘッドを面研磨しなければなりません。おそらくシリンダー側も面研磨が必要になるでしょう。そうなると、それだけでは済まず、他の箇所にも様々な手を入れる必要が出てきます。

当然、ワイセコ用のピストンリングも入手する必要があります。


新たなエンジンの仕様

そのような面倒臭い事をしなくても、圧縮比を12.0:1以上に上げることができ、さらにワイセコどころかSTDよりも軽量化できるピストンがあります。それが、SOHCエンジニアリングが製作する、スペシャル鍛造ピストンです。

今回のオーバーホールに当たり、まずはこのSOHCピストンを組み込むことを前提に、全てを考えました。今までと同じではつまらないですから。

腰下

クランクケースは、前回組んだ際に新品を使いましたので、そのまま使用します。

クランクシャフトは軽量バランス済ですので、各ジャーナル部に問題がなければ、そのまま使用します。ですから交換パーツは、クランクメタル、コンロッドメタル、スタッドボルト、カムチェーン、カムチェーンスライダーあたりで済むでしょう。通常のオーバーホールと同じです。

時間があれば、ケースのスムージングやクランクのジャーナル部の磨き等をするかもしれません。まあ、気が向いたら、の話ですが。

腰上

幸いにも、程度の良い腰上部品を持っていますので、これらを使います。

シリンダーは面出し加工をして、SOHC製ピストンと組み合わせます。圧縮比は12.2:1を想定しています。

ヘッドは、同じく面出しのみとし、圧縮比を上げるための面研磨はしません。シートカットは必要のない状態ですので、インシュレーターとポートの拡大をする程度でしょう。

以前はよく、FJ用インシュレーターが使われましたが、現在は廃盤になっているようです。このFJ用インシュレーターは、XJR用に比べて内径が大きくなっていました。ですから、FJ用が入手できなくても、XJR用を拡大してやれば良いだけです。

カムシャフトは、以前にミハラスペシャリティが販売していたカムを使います。これはヨシムラST1よりもリフト量が高く、どちらかと言えば高速寄りになったものです。

ヨシムラカムでは、STD車両と同じ感覚で信号発信が出来るのに対し、ミハラ製カムでは、少し気を使う必要があります。でも慣れてしまえば、それほど苦痛にはなりません。パワー優先にすれば、多少のネガな部分が出たとしても、得るものの方が大きいのですから、大した問題ではありません。

ヘッドも、作る時点で気が乗れば、各部や各パーツを磨いて仕上げようと考えています。

実は以前は、レースでのタイムや結果を求めてエンジンを造っていましたので、楽しんでエンジンを造る余裕などありませんでした。でも今は、時間を気にすることなく、楽しんでエンジンを造ることができます。

ある作業は、ただの自己満足だけで、大した効果も期待できないものだったりします。でも、それでもいいんです。自分の為のエンジンを、楽しみながら造るのですから。

そうやって造ったエンジンが思ったようなパワーを発揮すれば、走っているだけで最高の気分になれます。

どんなエンジンが出来るのか、今から楽しみです。欲を言えば、昔からの仲間たちと毎年秋に一泊で行っている、恒例で高齢のツーリングに間に合えば良いのですが・・・

R1、10R、GSX-R、H2まで居ますので、勝負は高速道路ではなく、小さな峠道ですが・・・