10馬力の差

先日、T様から「パワーチェックしてきました。」とご報告がありました。

最近では、ダイノジェット(DYNOJET)などの測定機械が普及し、手軽にパワーチェックができます。料金も1万円以下で、パワー・トルク・空燃比(A/F)まで測定できるようです。便利な時代です。

では、XJR1300では何馬力出ていれば、合格なのでしょうか?
T様のマシンは、いったい何馬力だったのでしょうか?

オーバーホールされたXJR1300のエンジン


数字のマジック

私はオートバイ雑誌をほとんど買いません。運よく自分が取り上げられたものは購入しますが、それ以外では、もう15年以上は買っていません。

なぜかと言えば、内容がくだらないと感じるからです。乗っても違いが分からないライターが書いた記事、広告主の絡みで褒めることしか中身がない記事、同じネタを何度も何度も書く雑誌・・・読みたいと思わせてくれません。

でも、時々行くバイク屋さんで、パラパラとページをめくることはあります。特に、カスタム系の記事の中のXJR1300の車両には、自然と目がいきます。

『エンジンの仕様は○○○で、パワーは160馬力オーバー!』

そんな記事を目にするたびに、「オーナーはこのバイクに乗って、本当に楽しいのだろうか・・・」と考えます。

実は、パワー測定の数字には、大した意味はありません。何馬力あったとか、何馬力しか無かったとか、そんな事に一喜一憂しても、何の意味もありません。

同じ車両を何店舗かで実際にパワーチェックすれば分かりますが、ショップによって出てくる数字が違います。何故かと言えば、設定が違うからです。

大抵のオーナーの方は、自分の愛車のパワーが高い方が、低い数字よりも喜ぶものです。ですから、1割増し、2割り増しの数字が出るように設定されているショップは、幾らでもあります。

そのような状況で数字に一喜一憂しても、大した意味など無いのです。

そんな事よりも、一番大事なのは『乗って楽しいかどうか』です。
あなたがご自身の愛車に乗って、楽しいと思えるかどうか、また走りたいと思えるかどうか・・・


パワーチェックの意味

オーバーホール中のXJR1300のエンジン

では、パワーチェックをする事に意味が無いのか?と言われれば、そんなことはありません。意味はあります。それは、『差』です。

仕様を変えてパワーの出方がどう変わったのか、ピークパワーはどう変化したのか、異なるマシンとどう違うのか、といった差です。

ですから、パワーチェックで大前提になるのが、『同じ機械で測定する』ことです。つまり、同じショップで測定し、その結果としての差を見る事に意味があるのです。

ご参考までに、私が今までに造ったXJR1300のパワーチェックの数字を、幾つかご紹介します。当然、全て同じショップで測定した結果です。

  • XJR1300レーサー:152ps
  • XJR1300街乗り仕様:150ps
  • XJR1200街乗り仕様:140ps

この差を見て、あなたはどう感じますか?


T様のXJR1300のパワーは?

パワーチェックの結果、135psだったとの事でした。

この数字を聞いて、高いとか低いといった感想はありませんでした。ただ一つ気になった事は、そのショップで今までに測定したマフラーとキャブを変更したXJR1300は、どれも125ps程度であった、という事です。

T様のマシンも、キャブとマフラーは変更されています。よほどキャブのセッティングを外していない限り、そこに大した違いはありません。

では何故、10馬力もパワーが違うのか・・・

T様のマシンは、ピストンもカムも変更していません。ポートすら一切削ってもいません。唯一異なるのは、「圧縮比を上げている」ことだけです。

ヘッドの面研磨で圧縮を少し上げ、バルブタイミングやバルブの擦り合わせを含め、丁寧に組んだくらいです。でもそれだけで、10馬力の差になって表れます。

その10馬力の差以上に、乗って楽しいマシンに仕上がっています。どこが楽しいと感じるのかを言葉で表現するのは難しいのですが、あえて言うならば、パンチがある、ということです。

アクセルを開けた時に、低速からパンチの効いた加速感が味わえるのです。それに加え、フロントフォークのスプリング変更や油面の見直しで、コーナリングを楽しめるようになりました。ですから余計に楽しいと感じられるのでしょう。

面研磨したシリンダーヘッド

このように、カムシャフトやピストンを変更しなくても、ちょっとした工夫と丁寧なオーバーホールで、スタンダードとは違った『楽しさ』を感じられるマシンを造ることが出来ます。

あなたがXJR1300を『乗って楽しい』マシンにしたいとお考えなら、私がお手伝いさせて頂きます。

まずはお気軽にお問合せ・ご相談ください。責任と誠意を持って、あなたの疑問やお悩みにお答えいたします。