エンジン組立て・クランクケース

やっと塗装まで終わりました。これからは急ピッチで組立てていかなければなりません。GWに間に合わせる、とのお客様とのお約束です。私の個人的な都合により、26日までに納車しなければなりません。

FCRキャブレターのリターンスプリング変更もあります。試乗もしなければなりません。頑張らないと・・・


エンジン組立て前の最後の作業

スクレッパーで合わせ面の修正

塗装が終わり、すぐにでも組み始めたいところですが、マスキングテープを剥がすと、合わせ面に微妙に塗料が入り込んでいる箇所があります。このまま組み付けていっても、おそらく大丈夫でしょうが、気分が悪いのは間違いありません。

自分のエンジンだったら、どうするか・・・?

間違いなく、入り込んだ塗料を取り除きます。ですから当然、お客様のエンジンでも取り除きます。

「どうしようか・・・」と迷った時は、常に『自分のバイクだったらどうするか・・・?』と考えます。自分のバイクだったらする作業を、お客様のバイクで省く訳にはいきません。

ですから写真のように、スクレッパーで入り込んだ塗料を全て取り除いていきます。同時に合わせ面を全て脱脂していきます。テープの糊が残っていないとも限らないからです。

そして最後に、古いパッキンやガスケットが残っていないかを、全ての合わせ面でチェックします。もちろん、少しでも残っていれば即座にキレイに取り除きます。

以前、料理人に『仕込み8割』と聞いた事があります。友人のラーメン店を見ていても、同じ事を感じた記憶があります。

様々な具材からスープを作り、チャーシューを作り、その他のトッピングを用意し、店内をキレイに掃除し、テーブルを拭き、ハシや調味料を用意し、初めて開店準備が終わります。いわば仕込み作業です。

来店したお客様から注文を聞き、麺をゆでてスープを入れ、トッピングしてお客様に提供するまでの仕事は、1~2割、といったところです。

エンジン作業も全く同じです。組み始めるまでの作業を仕込みと考えれば、やはり仕込み8割です。今回は塗装までしましたので、9割近いかもしれません。


忘れていた「仕込み作業」・・・

スタッドボルトの取り付け

エンジンを組み始めようとした時、忘れていた「仕込み作業」を思い出しました。

内燃機屋さんに加工に出したり、サンドブラストや塗装の際に邪魔なので、スタッドボルトを外しておいたのです。これをまだ取り付けていませんでした。

ヘッド、シリンダー、クランクケースの各スタッドボルトを全て取り付けていきます。これでやっと組んでいくことができます。


クランクケース

ミッションを組み付けたクランクケースロア

ロアケースにシフトカム、シフトフォーク、ミッションを組み付けていきます。
次に、アッパーケースを組んでいきますが、まずはクランクの組立てです。

組立て前のクランクシャフトとコンロッド

メタル、コンロッドボルト、コンロッドナットを新品に交換して、コンロッドをクランクシャフトに組み付けます。

コンロッドボルトは、トルクを掛けると伸びます。レースの世界では、トルクではなく伸び量で管理することもあるくらいです。そのコンロッド大端部には、パワーがあるエンジンほど、予想を超えるような力が掛かっています。しかもヤマハ車は、昔からコンロッドが弱い、と言われています。

ですから、一度伸びたコンロッドボルト、つまり取り外したコンロッドボルトは、絶対に再使用はしません。そのせいかどうかは分かりませんが、XJR1300で11年間レースをしていましたが、コンロッドのトラブルは一度もありませんでした。

クランクを取り付けたクランクケースアッパ

コンロッドを組み付けたら、クランクシャフトをアッパーケースに組み付けます。もちろん、クランクメタルやカムチェーンは新品に交換します。

その後、スタータクラッチを組み付けて、アッパーケースは一旦終了です。

再びケースの合わせ面を念入りに脱脂し、新品のダウエルピンやOリングをセットして、いよいよ上下ケースを組み合わせます。その際、アッパーケースの合わせ面に液体ガスケットを薄く均等に塗布します。ケースを組んだ際に大量にはみ出るほど、厚く塗ってはいけません。

クランクケースを合わせた後


XJR1200・1300のオーナー様へ

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完成後は、店主自らが試乗テストをしますので、納車後すぐに安心してツーリングに出かけられます。

その際、ご要望がありましたら足回りのチェックをし、後日アドバイスもさせて頂きます。

ますはお気軽にお問合せ下さい。お一人お一人に誠意を持ってお答えいたします。